マイクには、大きくダイナミックマイクとコンデンサーマイクという2種類があります。
ダイナミックマイクは、感度は低いマイクではありますが、電源の供給が無くても使うことができ、また耐久性が高いため、ライブで使われることが多いマイクです。
一方で、コンデンサーマイクは感度が高く繊細な音まで拾うことができるマイクですが、電源が無いと使うことができず、また湿気などにも弱いため、屋内でのレコーディング向けのマイクになっています。
このページでは、ダイナミックマイクの構造や仕組みからメリット・デメリットや、ダイナミックマイクがどんな使い方に向いているのか、をまとめていきます。
ダイナミックマイクとは?
まずはダイナミックマイクがどんなマイクなのか、コンデンサーマイクとの比較を元にまとめていきます。
ダイナミックマイクの構造や仕組み
ダイナミックマイクの構造は、ムービング・コイル型とリボン型という2種類に分かれています。
ムービング・コイル型
ほとんどのダイナミックマイクは、このムービング・コイル型の構造で作られています。
ムービング・コイル型のダイナミックマイクの中には、ダイアフラムという振動する板とコイル、そして磁石が中に入っています。
音の空気振動によってダイアフラムが振動することで、ダイアフラムと直結しているコイルにも振動が伝わります。
このコイルの揺れと、後ろにある磁石が作る磁界によって電磁誘導(フレミングの右手の法則)を発生させます。
この電磁誘導により、音の空気振動が電気信号へと変わり音が伝わっていきます。
このような仕組みが、ダイナミックマイクのムービング・コイル型です。
リボン型
一方で、リボン型のダイナミックマイクというものも製造されています。
多くの場合、リボンマイクとも呼ばれ、仕組みは先ほどのムービング・コイル型と同じですが、コイルの代わりに折り目が付いた薄いアルミニウムなどのリボンを、磁石の間に吊り下げた構造になっています。
音によりダイアフラムが振動すると、このリボンが動いて磁石の磁界により電磁誘導が発生して、音を電気信号に変換させています。
中のリボンは2mm程度ととても薄く作られているため、ムービング・コイル型と比べると繊細でノイズも入りがちですが、高い音も拾いやすく柔らかい暖かみのある音が特徴です。
コンデンサーマイクとの違い
マイクは、大きくダイナミックマイクとコンデンサーマイクに分かれますが、どのような違いがあるのでしょうか?
前述のようにダイナミックマイクは、音の空気振動からコイルやリボンが動くことで、磁石の磁界から電磁誘導を発生させて、音を電気信号に変えています。
一方、コンデンサーマイクはダイアフラムとバックプレートと呼ばれる2枚の金属板で構成されています。
それぞれの金属板2枚の間に電気を貯めて置き、音の空気振動によりダイアフラムが揺れることで、内部の電気が変化します。
この電気信号を取り出して音を伝えていくのが、コンデンサーマイクの仕組みになっています。
つまり、ダイナミックマイクはコイルと磁石によって電気を発生させているのに対して、コンデンサーマイクは最初から電気を供給させておいて、その電気の変化を取り出すという違いがあります。
ダイナミックマイクのメリット
ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの構造の違いが分かってきたところで、コンデンサーマイクと比較してダイナミックマイクのメリット部分をまとめていきます。
電源の供給が不要
ダイナミックマイクを使う際には、電源の供給が必要ありません。
前述した通り、コンデンサーマイクには2枚の金属板にあらかじめ電気を貯めておく必要があります。
そのため、コンデンサーマイクを使う場合は、電源を常に供給しながら使います。
一方で、ダイナミックマイクは内部で電気を発生できる仕組みになっているため、電源の供給はいらないので、非常に楽に使うことができます。
価格が安い
ダイナミックマイクは、コンデンサーマイクと比較すると価格は安いマイクが多いです。
コンデンサーマイクでは、内部に電気を貯めて置いたり、増幅させるための電子回路を作る必要があり複雑になっています。
一方で、ダイナミックマイクは非常にシンプルな作りとなっているため、コンデンサーマイクよりも手軽に作れます。
そのため、ダイナミックマイクは価格帯が安くなりやすいです。
ただし、ピンからキリまであり、ダイナミックマイクでも高品質なものは高価格で販売されています。
湿気や高音圧など耐久性に優れている
ダイナミックマイクは、非常に耐久性に優れています。
なぜなら、ダイナミックマイクにはコンデンサーマイクのような電子回路が必要ないため、水などにも強い構造になっています。
また、コンデンサーマイクで高音圧の音を拾ってしまうと、電圧の変化が大きく音が歪んでしまうことがありますが、ダイナミックマイクではある程度の音圧にも耐えることができる仕組みになっています。
そのため、屋外や激しい使い方にも、ダイナミックマイクは耐えることができます。
ダイナミックマイクのデメリット
一方で、ダイナミックマイクにもデメリットもあります。
感度が低い
ダイナミックマイクは、コンデンサーマイクと比べて感度が低い、というデメリットがあります。
ダイナミックマイクもコンデンサーマイクも、ダイアフラムという振動板が内部に設計されています。
しかし、ダイナミックマイクのダイアフラムは厚くて重くなっているため、コンデンサーマイクと比較するとダイアフラムが揺れづらいです。
そのため、ダイナミックマイクの感度は低くなりやすいです。
入力音量が小さい
ダイナミックマイクの入力音量は、コンデンサーマイクと比較すると小さいです。
ある程度大きい音であれば、ダイナミックマイクでもしっかりと拾ってくれますが、音圧が低いと構造上ダイアフラムが揺れづらくなっています。
そのため、少しでもマイクから離れてしまうと、ボーカルの音声なども小さくなってしまうことがあります。
ダイナミックマイクに向いている用途
ダイナミックマイクのメリットとデメリットが分かったところで、ダイナミックマイクがどのような用途に向いているのかを紹介していきます。
ライブ
ダイナミックマイクが、一番得意とする場面がライブ会場です。
特に、ボーカル向けではパフォーマンスなどで、激しく使われることも多く、耐久性の高いダイナミックマイクが非常に優れています。
また、屋外だと雨や風などの影響を受けるため、コンデンサーマイクでは故障してしまいます。
そのため、ライブ用途ではほとんどの場合でダイナミックマイクが使われています。
宅録
自宅での録音を宅録と呼びますが、宅録用のマイクとしてもダイナミックマイクは使われることがあります。
レコーディングでは、通常は繊細な音をキャッチできるコンデンサーマイクが主流ですが、自宅では周りの騒音や道路の音などのノイズ音が多いです。
感度の良いコンデンサーマイクでは、これらの音をすぐに拾ってしまうため、環境次第では宅録では合わない場合があります。
また、個人利用において、ダイナミックマイクの方が価格が安いというメリットもあります。
そのため、宅録用としてダイナミックマイクを使うのは、予算・環境次第ではありかと思います。
ドラムのレコーディング
先ほど、レコーディングでは通常コンデンサーマイクを使うとお伝えしましたが、どの楽器のレコーディングを行うかでも異なります。
ドラムやパーカッションなどの打楽器のレコーディングを行う際は、高音圧でも耐えられるダイナミックマイクが使われることがあります。
コンデンサーマイクで録音できないことはないですが、あまり近くにセッティングしてしまうと音が歪んでしまうことがあります。
また、ドラムではリズムのためにもあまり部屋の残響音などが入らない方が良いため、ダイナミックマイクの方が適しています。
カラオケ
カラオケマイクも、ほとんどダイナミックマイクが使われています。
大声で歌う、叫ぶなど、カラオケマイクには耐久性を非常に重視すべきですので、ダイナミックマイクがぴったりです。
また、価格も安いため、準備しやすいのもメリットの部分になります。
ダイナミックマイクを接続する際の注意点
ここまでのように、ダイナミックマイクはメリットもありながら、デメリットもあるので、適した使い方をしていくようにしましょう。
ダイナミックマイクは耐久性に高いので、そこまで気にしながら使う必要はありませんが、注意すべき点もまとめておきます。
ファンタム電源が入っていないかどうか
ファンタム電源とは、コンデンサーマイクを使う上で必要となる電源のことです。
メリット部分でも述べたように、ダイナミックマイクでは電源の供給が要りません。
ただし、コンデンサーマイクを使った後にダイナミックマイクに差し替える場合には、非常に注意が必要です。
コンデンサーマイクにファンタム電源を送っている状態で抜いて、ダイナミックマイクをそのまま差してしまうと、ダイナミックマイクには不要な電気が入ってきてしまいます。
すぐに気づいて抜けば問題無いですが、ダイナミックマイクは構造が異なるので、故障の原因となるので気を付けましょう。
パソコンへの直接接続
ダイナミックマイクをパソコンで接続して使う際に、直接差し込んでしまうのもNGです。
特に、パソコンのマイク入力端子からはプラグインパワーという電気が送られています。
先ほどのファンタム電源と同様に、ダイナミックマイクに電気が送られることは構造上良くないため、直接接続することは避けるようにしましょう。
コンデンサーマイクも含めて、パソコンにマイクを繋げるためには、一般的にオーディオインターフェイスと呼ばれる機械を使います。
オーディオインターフェイスを使うことで、マイクの故障を防ぐだけでなく、音もクリアに送ることが出来るので、知らない方は以下のページを参考にしてください。
おすすめのダイナミックマイク
最後におすすめのダイナミックマイクをご紹介いたします。
BEHRINGER Ultravoice XM8500
ドイツの音響機器メーカーBEHRINGER(ベリンガー)が製造したマイクです。
価格が安いながらも中音域をしっとりかつ滑らかに集音することができる性質を持ったマイクで、安いので1本持っておいても損はないマイクです。
ボーカル向けのマイクにはなりますが、自宅でレコーディングにも使いやすい商品になります。
Shure SM58
知っている方も多いマイクではあるかと思いますが、イヤホンなども製造しているアメリカ企業のShureの商品で、ゴッパチやゴッパーなどの愛称で呼ばれているマイクです。
ライブハウスに置かれていることが多いですが、レコーディングとしても良く使われます。
性能としては中音域にパンチがある音質で、また近接効果を見越した低音のカットもされておりPCに繋ぐ上でも満足いく音を得られるダイナミックマイクになっています。
SENNHEISER MD441U
こちらもドイツのメーカーSENNHEISER(ゼンハイザー)が製造したマイクです。
パワフルな音を求めつつ些細な音にも焦点を当ててくれるマイクです。
単一指向性の中でも特に限られた音だけを集音する超単一指向性マイクで、そのおかげで透き通るような音を録ってくれるので、PCに繋いでデジタルのレコーディングをするのにも向いているマイクといえます。
まとめ
このページでは、ダイナミックマイクがどんなマイクなのか、構造や仕組みなどをまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
ダイナミックマイクは構造上、
- 電源がいらない
- 低価格
- 耐久性が高い
というメリットを持つ一方で、
- 低感度
- 入力音量が小さい
というデメリットを持っています。
ページ内でも紹介した通り、ライブや宅録では十分に発揮できる力を持っているマイクです。
適した使い方や注意点を参考に、是非ダイナミックマイクを手にして頂ければと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!