マイクを選ぶうえで重要になってくる点が、指向特性と呼ばれるマイクの性能です。
マイクの指向性とは、どこからの音を拾いやすくするか、反対にどの音を拾わないか、という性能のことです。
そして、マイクごとで指向性は異なりますので、使い方に合わせた最適な指向性を持ったマイクを選ぶ必要があります。
このページでは、マイクの指向性について、種類や選び方についてまとめていきます。
マイクの指向性とは?種類から特徴まで
マイクの指向性とは、マイクの集音できる方向や角度が決まっている性能のことを言います。
この指向性の性能を持つかどうかで、大きく「指向性マイク」と「無指向性マイク」の2つに分類することができます。
そして指向性マイクは、正面からの音を一番よく拾う単一指向性と、正面からの音と同じくらい背面からの音を拾う双指向性の2種類に分かれています。
単一指向性
単一指向性は、正面からの一方向の音を捉えやすい性能のことを言います。
音源に対してうまく狙いを定めることができれば、余分な音を集音せず必要な音のみを抽出することができるので、楽器同士が隣り合って配置されているライブやレコーディングのような現場で効果を発揮します。
また、単一指向性マイクには近接効果と呼ばれる、音源がマイクに近づくほど低域が強くなるという特徴があります。
単一指向性はさらに4つに分類されており、
- カーディオイド
- サブカーディオイド
- スーパーカーディオイド
- ハイパーカーディオイド
となっています。
カーディオイド
単一指向性の中でも一番使われていることが多いのが、このカーディオイドのタイプになります。
マイクの正面からの音への感度が最も高く、背面からの感度が最も低いことが特徴です。
正面以外の音を拾わないわけでは無く、カバー出来る角度は131°となっているため、一本のマイクで2人で歌う場合でも問題ありません。
また比較的ハウリングにも強いので、ライブやレコーディングにと使われることが多いマイクです。
サブカーディオイド
サブカーディオイドはワイドカーディオイドとも呼ばれますが、横に大きく集音範囲を持つカーディオイドタイプになります。
楽器によって、正面だけでなく音の響きを取り入れたい場合に、活用することができるタイプです。
また、近接効果を持たないため、ナチュラルな音で拾いやすいのも特徴です。
ただし、カーディオイドよりもハウリングが起きやすいので、使う際は注意する必要があります。
スーパーカーディオイド(超単一指向性)
スーパーカーディオイドは超単一指向性とも呼ばれ、カーディオイドよりも音の拾う角度が115°と狭くなっており、横からの音をほとんど拾わないタイプになっています。
また、背面からの音に対しては、カーディオイドよりも感度が高くなっているのが特徴です。
マイクの近くの音に対しての遮音性は高く、ハウリングの発生も起きにくいです。
ただし、しっかりとマイク正面に音がいかないと拾ってくれないことがあるため、マイキングはとても重要になります。
ハイパーカーディオイド
ハイパーカーディオイドはスーパーカーディオイドをさらに狭くしており、音の拾う角度は105°となっています。
背面の感度はスーパーカーディオイドよりも高く、この後説明する双指向性に近い特徴を持っています。
ただし、横からの音の遮音性は非常に高いため、動き回るような使い方は難しいです。
よく使われているのは、スポーツ中継や舞台のテレビ中継など、周りの歓声などの音声が大きいなか、しっかりと声を届かせたい場合などに使われることが多いです。
双指向性
双指向性は、正面からの音と背面からの音を同じ感度で拾うことができるタイプになります。
先ほどのハイパーカーディオイドの背面からの感度を大きく引き上げたタイプで、拾う角度は90°と横からの音をほとんど拾うことはありません。
対談など向かい合った2人の音声を拾いたい場合に効果的です。
また、背面からの音が無い環境下であれば、横からの音を拾わないため、複数の音の中から特定の音をピックアップするのに向いています。
無指向性(全指向性)
無指向性は指向性を持っていないマイクで、全指向性とも呼ばれることがあります。
マイクの正面・背面に関わらず、マイクの周り360°の音を全て同じ感度で拾うという特徴があります。
マイクの集音範囲や角度を意識する必要がないので便利な反面、不必要な音を拾ってしまうことでハウリングを起こす危険も伴います。
無指向性マイクは音楽のレコーディングやライブの場合、ドラムセットの上に立てて全体の空気感を録るのに使われます。
また、演劇などの舞台においては「バウンダリーマイク」と呼ばれる無指向性マイクが使われることがあります。
これは、薄型でパッと見てもマイクと分からないような平らなマイクで、床に置くことで舞台全体の音を拾うことができます。
二次反射という壁や床などからの跳ね返りの音に強いのも、バウンダリーマイクの特徴の一つです。
マイクの指向性の選び方
ここまでマイクの指向性の種類が分かったところで、ここからはマイクの使い方に合わせてどの指向性を選ぶべきかをまとめていきたいと思います。
あくまでも参考程度で、使い方や拾いたい音に合わせて選んでみてください。
ボーカルや歌
レコーディングやライブなどで、ボーカルなどの歌の収音をするのであれば、単一指向性のカーディオイドタイプがおすすめです。
ボーカルなどの声は、音の発生する口を狙うことで、しっかりと音を拾うことができ、またその響きも収音することができます。
また、単一指向性の特徴である近接効果も、ボーカルには最大限の効果を発揮することができます。
マイクに近づくことで低音のしっかりした力強いサウンドになりますし、マイクから離れることで高域にフォーカスしたサウンドになります。
そのため、ボーカルや歌の録音などでは、単一指向性のカーディオイドタイプを選ぶのが良いでしょう。
ギターなどの楽器
楽器の種類にもよりますが、ギターなどそれぞれの楽器毎に収音していくのあれば、単一指向性タイプがおすすめです。
楽器一つだけの音であれば、カーディオイドタイプ、もしくはサブカーディオイドタイプで充分ですが、もし周りにも他の楽器があり同時に収音していくのであれば、スーパーカーディオイドのように横の音を遮断できるタイプを選ぶ必要があるでしょう。
また、ギターの弾き語りなど歌とギターをマイク2本で取るのであれば、カーディオイドタイプのマイクを2本、1本で取るのであれば、ある程度広いサブカーディオイドタイプが良いかと思います。
会議
会議では、会議の大きさや参加者毎にマイクを準備するかどうかで、選ぶ指向性も変わってきます。
参加者一人に対して1本のマイクを準備するのであれば、単一指向性のスーパーカーディオイド、もしくはハイパーカーディオイドで大丈夫でしょう。
ただし、マイクの本数が多くなってしまうと、会議をやるためのコストも上がってしまいます。
そこで、小さな会議なら無指向性タイプのバウンダリーマイクを部屋の中央に設置することで、参加者ごとにマイクを準備する必要がなくなります。
より簡単にマイクを使った会議を行うことができ、コストも削減できるのでおすすめです。
インタビューなどの対談
一本のマイクで対談を行うのであれば、真ん中に双指向性のマイクを置くことで、両方向の音を拾うことができます。
ただし、双指向性マイクは横の音をほとんど拾わないため、対談の参加者が違う向きで話してしまうと、音が遠くなってしまう場合があります。
その場合、無指向性のピンマイクを両者の服に付けておく方が、音をしっかりと拾うことが出来るかもしれません。
その時の環境や状況次第で、どちらが最適か選んでいくようにしましょう。
ゲーム実況などのストリーミング配信
ゲーム実況などのストリーミング配信では、動きながら喋るといったことが多いので、単一指向性のカーディオイドが一番ぴったりなタイプになると思います。
無指向性タイプでも良いのですが、自宅や外など様々な音声を拾ってしまう可能性が出てくるため、やはり単一指向性が良いでしょう。
ただし、マイクから離れすぎてしまうと音声を拾わなくなってしまうので、その場合はヘッドセットタイプのマイクなどを使うとしっかりと音を拾ってくれます。
まとめ
このページでは、マイクの指向性の種類とどのタイプの指向性を使うのがおすすめか、についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
指向性と言っても、全部で6種類にもタイプが分かれているので、選ぶのはなかなか難しいと思います。
始めは、ポピュラーな単一指向性(カーディオイドタイプ)を使ってみて、少しずつ他の指向性を使ってみると、違いが分かりやすくなってくると思います。
少しでも、マイク選びの参考になれたら嬉しいです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!